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​2023年1月インドネシア共和国口唇口蓋裂医療技術支援活動

2023年1月インドネシア共和国口唇口蓋裂医療技術支援活動

富山大学 歯科口腔外科学講座 高塚 団貴


インドネシア共和国において口唇口蓋裂を対象とした医療技術教育支援活動を行いました
。コロナ禍ということもあり、約3年ぶりの活動となりました。
2023年1月21日〜1月29日の9日間でマタラムのWest Nusa Tenggara Hospitalとバンドン近郊のAchmad Yani将軍大学病院の2箇所を訪問しました。今回のメンバーは、富山大学 野口教授、大阪医科薬科大学 藤原先生・大道先生、函館中央病院 辻先生、沖縄県立八重
山病院 仲間先生の6名でした。また、口腔外科、麻酔科、看護師からなるインドネシア
チームと合同でミッションを行いました。
マタラムでは遠方から多くの口唇口蓋裂患者が受診され、インドネシアチームも含めて2
日間で30症例程度手術を行いました。中でも現地の口腔外科医にとって難症例である重度
顔面裂や大きな口蓋瘻孔を有する患者は野口教授が執刀されました。多くの患者が受診さ
れたことから、長年行ってきた支援活動によって日本チームに対しての厚い信頼があるこ
とが感じ取れました。
また、バンドンでは顎裂腸骨移植と鼻変形に対する修正術の2症例を行いました。術前に
は、現地の口腔外科医だけでなく、矯正歯科医も含めての合同カンファレンスを行いまし
た。Achmad Yani将軍大学は歯学部が併設されており、カンファレンスには矯正歯科医や
歯科学生も参加し、熱心に聴取していました。
かなり多忙なスケジュールでの活動でしたが、野口教授を始めとする経験豊富な先生方の
手術を短期間で多くみることができたことは、現地医師だけでなく、日本チームの若手口
腔外科医にとっても有意義な経験となりました。また、言語の壁は多少ありましたが、多
くの現地スタッフと交流することができ、インドネシアの医療事情について知ることがで
きました。現地の方々は、どなたも親日的であり、サッカーワールドカップでは日本の応
援を熱心にしていたという方もいるほどでした。
インドネシアでの現地の活動自体は主に手術となります。しかし、今日ではSNSを活用し
現地の方々と密なコミュニケーションを取ることが可能で、適宜日本の術者から術後の管
理やフォローアップに関しての細かい指示を送れるようになっています。このような、患
者さんにとって有益な体制ができているのも長年活動を行ってきた賜物ではないかと思い
ました。インドネシアでの経験を糧に、今後の臨床にも活かしたいと強く思いました。

インドネシア共和国医療支援活動で感じたこと

大阪医科薬科大学 口腔外科教室 大道麻由

この度のお話をいただいたのは昨年の秋頃でした。コロナ禍であったこともあり、久々の海外で不安もありましたが、口唇口蓋裂の手術に立ち会える貴重な機会をいただけて大変嬉しく感じておりました。口唇口蓋裂治療は、国家試験レベルの知識しかない私にとっては、未知の領域でもあり、学ぶ機会を与えていただいたことに感謝し、誠心誠意向き合っていこうと考えました。また、藤原先生と共に昨年10月から大阪母子医療センター・山西整先生の手術見学に同行し、口唇口蓋裂の症例を学ばせていただく機会をいただき、活動に行く前に口唇口蓋裂について現場で学ぶことができました。さらに症例の知識のみでなく、将来を担う子供たちへ施す手術の重要性や、一つ一つの手技が確実であることが手術の成功を生み出すのであろうという臨床面の重要なことも学べたと考えます。今回の医療支援活動は、コロナの影響もあり口腔外科医6名での参加となりました。訪問した病院は、ロンボク島マタラムのRSUD Provinsi NTB病院とジャワ島バンドンにあるAchmad Yani将軍大学病院で手術を行いました。RSUD Provinsi NTB病院は州立の大きな病院で、手術室は古かったものの日本と変わらない設備が設置されておりました。また入院病棟は新しく清潔で、入院患者が過ごしやすい環境でした。同院では2日間で32名の手術を行いました。私が特に強い印象を受けたのは斜顔裂の症例で、執刀医であった野口先生の手技に圧倒されました。その後、Achmad Yani将軍大学歯学部付属病院を訪問し、手術を行いました。手術前には担当の矯正歯科医による症例の提示と治療方針に関する議論が行われ、議論は白熱していました。我々日本チームも英語を介して症例検討を行い、有意義な教育活動となりました。手術は2症例行われ、私は顎裂部腸骨移植術に外回りとして参加しました。日本チームの先生方と現地のドクターが合同で手術を行い、術中は英語で交流を図り手術を行なっていました。医療において英会話能力の重要性を感じることができました。また医療援助の最中に、4年前に日本チームで手術した斜顔裂の患者さんの診察も行うことができ、この医療援助が現地で重要とされていることを強く感じました。今回の医療援助に参加して強く感じましたのは、普段手術を行っている現場と、全く違う環境で、臨床を行うことは非常に緊張感があるということです。しかし、現地で執刀されている先生方は、その中でも日本でいる時と変わらず、正確な手技で冷静に手術に挑まれており、先生方のような医療人に少しでも近づきたいと感じました。

参加者:野口誠(富山大学)、藤原久美子(大阪医科薬科大学)、辻司(函館中央市民病院)、仲間錠嗣(八重山病院)、高塚団貴(富山大学)、大道麻由(大阪医科薬科大学)

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